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福岡地方裁判所小倉支部 昭和31年(ヨ)207号 決定

申請人 日華油脂株式会社

被申請人 日華油脂労働組合

主文

一、小倉市板櫃二八二五番地の三所在申請会社小倉工場作業所三四九八、五坪(別紙第一図面表示の地域但しイ、ロ、ハ、ニ、ホ、ヘ、ト、チ、リ、ヌ、ル、ヲ、ワ、カ、ヨ、タ、レ、ソ、ツ、ネ、ナ、ラ、ム、ウヰ、ノ、イ点を結ぶ朱線を以て囲む組合事務所及びこれに通ずる道路を除く)、

及び、同市板櫃中井地先公有海面埋立地免許区域内同工場作業所七二、一六坪(別紙第二図面表示の地域にしてい、ろ、は、に、ほ、へ、い点を結ぶ板塀を以て囲む部分)の土地、建物並びに施設に対する申請会社及び被申請組合の占有を解き、之を申請会社の委任する、福岡地方裁判所小倉支部所属の執行吏の保管に移す。

二、右執行吏は、被申請組合に所属する組合員、若しくは第三者をして、右区域内に立入らしめてはならない。

三、右執行吏は右作業所の土地、建物並びに施設を非組合従業、員日華油脂新労働組合員、荷造運搬の為従業稼動している日華組、武田組の従業員に使用させ又は立入らせることができる。

右の許可があつた場合、被申請組合は説得其の他団結による示威以外の方法で、人の出入り及び物品の搬出入を妨げてはならない。

四、右執行吏は本命令の趣旨を公示する為適当な方法をとらねばならない。

(注、保証金五十万円)

(裁判官 古賀俊郎 平田勝雅 山口定男)

(別紙省略)

【参考資料】

仮処分命令申請

申請人 日華油脂株式会社

被申請人 日華油脂労働組合

立入禁止仮処分命令申請事件

申請の趣旨

一、別紙目録第一図記載の作業所内の土地建物其他すべての物件に対する被申請人の占有を解き之を申請人が委任する福岡地方裁判所小倉支部所属の執行吏の保管に移す。

二、右執行吏は被申請人に所属する組合員若くは第三者をして右各区域内に立入らしめてはならない。

但し第一図面記載の朱線を以て結ぶ地域は組合用務の為組合事務所に立入る時に限り被申請人等所属組合員の出入は此の限りでない。

三、右執行吏は右作業所の土地建物其他すべての物件を非組合従業員、日華油脂新労働組合員、荷造運搬の為従来稼働している日華組、武田組の従業員に使用させ又は立入らせなければならない。

四、被申請人等は自ら又はその所属組合員若しくは第三者をして前項の者の立入りを妨害し又は妨害させてはならない。

五、被申請人等に於て前三項を実行しないときは執行吏はその実行につき自ら必要な処分を為さなければならない。

六、右執行吏は右物件がその保管に係ること及びこの仮処分の内容を公示する為立札掲示板の設置其他適当な方法をとらなければならない。

申請の理由

一、申請人は石鹸マーガリン硬化油脂肪酸グリセリン等の油脂加工を業とし作業所を小倉市板櫃二八二五番地の三に有しているものであるが被申請人組合は申請人会社に所属する労働組合で小倉作業所を小倉支部と称している。

二、被申請人は昭和三十一年九月十三日申請人会社に対し同年九月以降の賃金につき金参千円也の値上げ要求の申入を為し団体交渉継続中の処申請人会社に於て被申請人の値上げ要求に応じないところより昭和三十一年十一月一日闘争態勢をとり昭和三十一年十一月二日午前七時より二十四時間一齊罷業ストに入つたそこで申請人会社は対抗手段としてロックアウトの宣言通告を為し同年十一月二日午前七時ロックアウトを行つた。

因に申請人と被申請人組合との間の労働協約は昭和三十一年十月十五日失効現在無協約である。

三、被申請人組合は兵庫地方労働委員会に斡旋を申請したので申請人会社は昭和三十一年十一月十二日午前七時よりロックアウトを解除した。

四、同年十一月十七日兵庫地方労働委員会は組合員一人当り壱千参百円値上げの斡旋案を提示したが被申請人組合は此れを拒否し申請人会社の回答期限十一月二十四日を待たず十一月二十三日スト通告を行い翌十一月二十四日午前七時より無期限一齊罷業ストに入つた爾後比較的平穏な態度に出ていたが十一月六日被申請人組合を脱退した五十八人の組合員は日華油脂新労働組合を結成し申請人会社と団交協定を結び十二月十日より就労することに決定したので被申請人組合は合成化学産業労働組合連合会並に小倉地区労の応援を受け不穏の形勢を現すに至り何時作業所に侵入する事態を惹起するやも測れぬ険悪な空気を醸している。

五、今若し作業所に侵入されることになれば油脂の硬化に水素を多量に使つている関係上爆発の危険がありマーガリン、ショートニングの製造用アンモニヤ冷凍設備は取扱を誤れば有毒作用あるのみならず爆発の危険もあり且つ各所に硫酸苛性ソーダの危険物を多量使用している為危険発生の蓋然性があるので之等の危険防止の為作業所に対する立入禁止を求むる為本仮処分命令申請に及ぶ。

疏明方法(省略)

右申請す。

昭和三十一年十二月十日

右申請代理人 弁護士 木下重範

福岡地方裁判所小倉支部 御中

(別紙省略)

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